メディカルコラム

バセドウ病と正しく付き合うためにやってはいけないこと

  • #ストレス
  • #たばこ
  • #バセドウ病
  • #治療
  • #食事制限

バセドウ病との付き合い方

バセドウ病は、「完治」のしない病気です。とはいえ、治療を適切に行い、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールすることで、健康なときと同じ生活を送ることができる病気でもあります。

ただし、治療を怠ったり、生活習慣が乱れていると病状が悪化したり、治療の効果が薄くなってしまうことがあります。

そんなバセドウ病と正しく付き合っていくためには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。

やってはいけないこと

喫煙

喫煙者の方はバセドウ病を発症しやすく、眼球突出などの眼症状もあらわれやすくなります。
また、治療の効果が小さくなったり、術後の傷の治りが悪くなるなどのリスクもあります。

バセドウ病に限らず、多くの甲状腺疾患において、喫煙が多大な悪影響を与えると考えられています。そのため、隈病院では患者の皆さまに、禁煙を強く推奨しています。

自己判断による治療の中断

バセドウ病の治療においてもっとも重要なことは、病院で処方される、甲状腺ホルモンの産生を抑えるお薬(抗甲状腺薬)の内服を中止しないことです。治療を継続するうちに症状が安定してくると、完治したように感じて、内服をやめてしまったり、不規則な内服となってしまうケースが少なくありません。

しかし、バセドウ病は、治療によってお薬を減らしたりなくしたりすることはできても、完治しない病気です。ご自身の判断で、内服を3〜4日とめてしまうだけで、最初の甲状腺機能亢進状態に戻ってしまうことがあります。

さらに、自己判断で内服をとめてしまうことで、甲状腺クリーゼと呼ばれる、生命に危機が及ぶ重篤な甲状腺機能亢進状態に陥る危険性も高まります。バセドウ病に罹患したら、症状がおさまっても油断せずに医師の判断通りの治療を続けることが重要なのです。

一方で、抗甲状腺薬の内服には、副作用の可能性もあります。

副作用は、治療開始から3ヶ月以内の期間に発生することがほとんどです。
多くは、軽度な痒みや蕁麻疹などの症状のみでおさまりますが、まれに、重篤な肝機能障害や高熱があらわれることもあります。

そのため、当院では服用をはじめてから3か月間は、2週間ごとに通院し検査を受けていただくよう、お願いしています。

食事(ヨウ素の過剰摂取)

バセドウ病は、基本的に、食事における制限はありません。

ただ、バセドウ病だけでなく甲状腺の疾患を持つ方は、海藻類やイソジンなどのうがい薬に多く含まれるヨウ素と呼ばれる成分に注意が必要です。

特に放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)や甲状腺の切除手術をうけて甲状腺が小さくなっている方は、ヨウ素を大量に摂取すると、甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。
しかし、一般的な食事ではヨウ素の過剰摂取となることはほとんどありません。
根昆布療法を行っていたり、イソジンなどのうがい薬を毎日使用している場合は、過剰摂取となってしまうことがありますので、注意が必要です。

甲状腺機能亢進症の症状が続いている場合にやってはいけないこと

過重労働・ストレス

基本的には、ご自身の体調に無理のない範囲で、通常の勤務を続けていただくことができます。

ただし、バセドウ病はストレスなどの原因によって症状が悪化することがあります。
甲状腺機能亢進症の症状(動悸や息切れなど)が重くなったり、睡眠障害などの精神症状を伴う可能性もありますので、肉体的にも精神的にも、負担が大きくなりすぎないよう、注意が必要です。

症状が安定するまでは、適度に休憩をとったり、場合によっては休職を選択肢に入れても良いかもしれません。

激しい運動

甲状腺機能亢進状態(動悸、息切れなど)が続いているあいだは、激しい運動を控えましょう。

甲状腺ホルモンが過剰に産生されていると、安静時でも脈拍が早くなります。そのうえで、運動によって心臓への負荷が大きくなると、心不全や心房細動などのリスクが上がってしまうのです。

ただ、甲状腺機能が安定してからは、特に運動を制限する必要はありません。
一般的には治療開始から約2ヶ月経過後には、運動制限がほぼなくなると考えてよいでしょう。ただし、治療の経過や運動量によって変わりますので、担当医に相談しながら慎重に始めるようにしましょう。

本記事は、隈病院の医師が監修しています。

友だちや家族に教える