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症状

甲状腺腫瘍は良性/悪性を問わず、自覚症状のないことが多いです。検診や別の病気の検査時に突然見つかる場合や、触ってわかるほど大きなしこりになった段階でようやく気が付く、というケースがよくみられます。しこりが大きくなると、以下のような症状がみられることがあります。

主な変化

  • 首の腫れ(見た目にわかるほど大きくなることもある)

  • 圧迫感(のどが締め付けられる感じ)

  • 飲み込みにくさ

  • 声のかすれ(腫瘍が声帯を動かす神経を圧迫した場合)

  • しこりに触れる

甲状腺のしこりは大部分(90%)が良性のため、心配しすぎることはありませんが、治療が必要な悪性腫瘍である可能性もありますので、専門の病院で検査・診断を受けることをおすすめします。

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また、一般的に甲状腺腫瘍は甲状腺ホルモンを分泌しませんが、一部甲状腺腫瘍が過剰に甲状腺ホルモンを分泌することで、甲状腺機能亢進症と似た症状を引き起こすことがあります。(プランマー病)

種類

良性の甲状腺腫瘍(結節)には、以下の3つの種類があります。

腺種様甲状腺腫・腺腫様結節

甲状腺に1〜数個のしこり(結節)ができる病気です。しこりが複数の場合「腺種様甲状腺腫」、しこりが1つだけの場合「腺腫様結節」と呼ばれます。(これらは、医学的に正確には腫瘍ではありません。正常細胞の過形成と考えられますが、取り扱いが同様なためここで紹介しています。「理解が深まる用語解説」参照)

濾胞腺腫

甲状腺にできる痛みのない良性腫瘍で、ゆっくりと発育していくのが特徴です。かなり多くの日本人にみられます。悪性の濾胞がんと鑑別することが難しい場合があり、慎重に経過を観察する必要があります。

注意

以下の場合、完全には濾胞がんである可能性を否定できません。

  • 腫瘍のサイズが大きい、もしくは大きくなる傾向がある
  • 腫瘍の内部の血流が多い
  • 腫瘍内部に別の腫瘍がある
  • 腫瘍が被膜からはみ出すように大きくなる
  • 血液検査のサイログロブリン値が高い

甲状腺のう胞

甲状腺のう胞は、液体の溜まった袋が甲状腺の中にできている状態をいいます。

原因

一般に良性腫瘍の原因は、明らかになっていません。最近の研究で、遺伝性の腫瘍についてはいくつかの遺伝子の関与が明らかになっています。

検査

甲状腺の良性腫瘍の検査は、腫瘍の種類や性質を調べるために、「血液検査」や「超音波検査」「細胞診(穿刺吸引細胞診)」を行います。このほか、アイソトープ検査や、しこりが大きい場合などは必要に応じて頸部X線検査(レントゲン検査)、CT検査、MRI検査を行うこともあります。

超音波検査(エコー)

超音波検査は、腫瘍の有無だけでなく、その数、大きさ、形状や血流状態などを確かめるのに不可欠な検査です。

細胞診(穿刺吸引細胞診)

細い注射針で、細胞を直接採取する検査です。腫瘍の性質(良性か悪性か)を調べるのに最も診断率の優れた方法です。通常の採血の注射針と同じ太さの針を使用するため、痛みは血液検査と同程度で、麻酔を行う必要もありません。
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治療

良性の甲状腺腫瘍は、基本的には経過観察(おおむね 1年ごとに通院・検査)を行います。多くの場合、長期間ほとんど変化せず、なかには縮小することもあります。
ただし、まれに(約5%程度)増大することがあり、なかでも次のような場合には手術をおすすめしています。

手術をすすめる例

  • 悪性の可能性が否定できない (超音波検査で疑い、触診で硬い)
  • 血清サイログロブリン値が非常に高値
  • 充実性のしこりで大きさが4cm以上
  • 経過観察中に増大
  • 縦隔(鎖骨より下の胸の中)まで発育している
  • 気管、食道など他の臓器を圧迫している
  • 甲状腺ホルモンを分泌している
  • 美容上の理由

まとめ

  • 甲状腺のしこりの90%が良性で、ほとんど自覚症状がなく、見過ごされているケースも多いと考えられます。
  • 良性の甲状腺腫瘍は、基本的に経過観察を行います。
  • がんと鑑別が難しい場合もあり、定期的な受診で変化がないかを観察します。
  • 悪性の疑いが強い場合や気管などを圧迫している場合には、手術をすすめることがあります。

理解が深まる用語解説

腫瘍

腫瘍とは、異常な細胞が無秩序に増殖し続けている状態のことを言います。甲状腺のしこりには、この腫瘍(悪性/良性)のほかに、ほぼ正常な細胞が刺激によって部分的に数が多くなった状態である「過形成」のものや液体がたまった「のう胞」と呼ばれるものがあり、これらは良性に分類されます。本記事では、「腫瘍」以外の良性のしこりにも触れて説明しています。

プランマー病

プランマー病とは、甲状腺腫瘍が甲状腺ホルモンを分泌することで甲状腺機能亢進の症状をおこす病気です。治療法も異なるため、ホルモンを分泌する腫瘍を「プランマー病」と呼び、その他の甲状腺腫瘍と区別しています。この病気には、他にも「自律機能性甲状腺結節」「過機能性甲状腺結節(単発の場合)」「中毒性多結節性甲状腺腫(多発している場合)」といった別名があります。

本記事は、隈病院の医師が監修しています。

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